三江線は平成30年3月末日の運行を最後に廃止されます。
本年3月末日で廃線となってしまうことで、にぎわいを見せている三江線。雪の影響で運転取り止めの期間がありましたが、無事に運転を再開しました。
18きっぷのシーズンをむかえて混雑が予測されますが、最後の機会の乗らないわけにはいきません。筆者は3月3日、4日の土日2日間で乗り納めの旅へと行ってきました。
三次駅を10時02分に出発です。
この列車は三江線の中では比較的乗りやすい時間帯であり、混雑は必至と予想されましたが、平日働かなければならない身分としては他に手段がなかったので仕方ありません。
水色と青色のラインの車両に乗車し、乗り納めの旅が始まります。少し早めの行動が功を奏して、着席することができました。発車時には、都心の通勤ラッシュと比べれば少しましだろうという程度の混雑具合でした。乗れない人はいなかったみたいです。
詳細は、以下の記事をご参照ください。
三江線は、江の川に沿って進むことから「江の川鉄道」の異名があります。列車が進むにつれて、車窓から見える江の川の表情もうつろいゆくのが三江線の魅力のひとつでしょう。三次駅を出るときは広かった川幅も、広島県と島根県の県境付近ではずいぶん狭くなってきます。
1時間ほど乗車して宇都井駅に到着です。
宇都井駅には11時09分に到着予定でしたが、車内の混雑の影響もあり5分ほど遅れての到着となりました*1。自動車でやってきている人が多いらしく、ホームは別れを惜しむ人でにぎわっていました。
駅の両側をトンネルに挟まれている宇都井駅は、地上約20メートルの高さです。
ホームからは、このあたりの地方で見られる赤褐色の屋根の民家とのどかな景色が広がります。さすが「天空の駅」というだけあって、見晴らしがいいですね。
地上までの階段は116段。なお、エレベーターはありません。
宇都井駅のホーム・待合室と地上の間は、20メートルの高さをすべて階段で上り下りしていきます。
なんだか昔の団地の階段のようで、コンクリート打ちっぱなしでちょっと殺風景でもありますね。
階段の踊り場には、ホームまであと何段あるか知らせてくれる貼り紙があります。地元の子どもたちでしょうか、手書きで作られているようでコンクリートの構造物に温かみを添えてくれます。
116段の階段を降りきって地上へとやってきました。ここで一句と言わんばかりに、カルタまであります。
「天空に 向かいそびえる 宇都井駅」
宇都井駅の姿がそのまま素直に読まれた句ですね。
地上に降りてわかる宇都井駅の全貌
階段を下りきって、地上に出てきました。空のほうを見上げると、古びて年季の入ったマンションのように階段棟が立ち、それと並んで高架を支える柱がそびえています。
先ほどまで自分が立っていたホームは、はるか上空にありました。やむを得ない事情があったとはいえ、よくここにホームを作ったものだと驚きあきれます。
駅から少し離れてみると、駅の構造物の全体像が少しずつ見えてきます。田畑の中にはなじまないコンクリートの構造物が兀然とそこにあります。
今ではすっかり有名となっていますが、これが駅であるとは言われなければわからないようなものです。
宇都井駅は、駅の構造が周りの景色と何となくミスマッチであるところ、これだけ大がかりなものでありながら今や数本の気動車がトコトコやってくるだけであるところ、そうしたある種の不釣り合いがおもしろく感じます。
ここでの途中下車は容易ではありません。しかし、列車が通っているうちに、駅として使われているうちに来られてよかったと思います。*2
(続く)