平成30年3月末日の運行終了が迫っている三江線ですが、その中で最も特徴的な駅となれば、宇都井駅の名が挙がるのではないかと思います。
宇都井駅は、ホームと待合室が地上約20メートルの高さにあり、ここへ至るには116段の階段を上っていく必要があります。
のどかな田舎の景色の中でひと際高くそびえたつ、一風変わった構造のこの駅は、「天空の駅」とも呼ばれています。
列車は1日当たり上下4本ずつ。途中下車するのは容易ではない。
宇都井駅に到着する列車は、上り・下りともに各4本ずつしか設定されていません(本記事は平成30年3月17日ダイヤ改正前の時点のものです。)。
三江線の廃線となる前に途中下車してみたい駅ではありますが、あらかじめプランをしっかり練っておかないと、列車の乗り継ぎが非常に難しいです。
時刻表をみて明らかなとおり、昼の時間帯ですと11時09分に到着する石見川本行きの列車の次は、浜原行きが18時09分発で7時間待ち、三次行きが17時37分発で約6時間30分待ちとなります。
さすがに、これはちょっと厳しいので、途中下車は朝か夕方の時間を狙うのが現実的ということになるでしょう。
あえて11時09分着の列車での途中下車に挑戦してみる
今回は、11時09分に宇津井駅に到着の列車(三次駅10時02分発)で途中下車するという無謀な計画に挑みました。
さすがに次の列車を7時間も待つというのは、宇都井駅で途中下車をする代償としては大きすぎます。その待ち時間の間に、他にも色々とまわったほうが有益でしょう。
そこで思いついた苦肉の策が路線バスの利用です。邑南町が走らせているおおなんバスへの乗り継ぎを目指します。とはいっても、バスに乗り継げるかどうかは時間的にギリギリで、ちょっとした冒険です。列車の遅延等や歩くペースによっては乗り継ぎに失敗して身動きが取れなくなるというリスクが伴うので、おすすめは致しません。
今回の乗り継ぎを簡単に図にすると、次のとおりです。
宇都井駅から今西バス停まで歩き、そこから、おおなんバスに乗車して、途中で道の駅で休憩をかねて乗り継ぎし、石見川本まで抜けます。
おおなんバスの詳しい時刻表は、以下をご参照ください。
http://www.town.ohnan.lg.jp/ohnanbus/ohnanbus.html
宇都井駅→今西バス停の乗り継ぎ(徒歩ルート)
今回の最初にして最大の難所が、宇都井駅から今西バス停までの徒歩ルートです。ここさえ間に合えば、後はバスに乗るだけです。
道程そのものは単純なもので、宇都井駅に面している道路の県道292号線をひたすらに南へ進むだけです。そして県道7号線と交わるところ(ちょっと東側)に今西バス停が立っています。
問題は、バスの発車時間に間に合うか否かです。グーグルマップでおよその道程を調べると「徒歩3.2km、50分」と出てきます。宇都井駅の到着が11時09分で、今西バス停の発車が11時57分なので、50分かけて歩くと既に間に合わない計算です。この時点で計画としては危ないです。
それでも、リスク承知で実際に歩いてみました(部分的に走りました)。ところが、思っていた以上にいっそう困難な事態となりました。
●そもそも宇都井駅に列車が定刻どおりに到着しなかったです。車内混雑の影響で5分くらい到着が遅れました。場合によってはもっと遅れることもあるかもしれません。また、宇都井駅の階段は116段あるので、地上に降りるまでに多少時間がかかります。
●県道292号線は、道のりの相当部分が結構な上り坂です(体感的には、半分以上は上っているように感じました)。なかなかの勾配じゃないかと思います。普段から鍛えているわけではないので、しんどかったです。走れば何とかなると思っていましたが、走れません。
●県道292号線の最後は、急な下り坂になっています。走ると転びそうになりますし、膝や足への負担が結構かかります。
バスの発車時刻10分ほど前になっても、まだ上り坂を歩いていたので、さすがに焦りました。気持ちばかり焦って、歩くペースが上がらないのはきつかったです。
上り坂がようやく終わると、最後は下り坂です。これは上りよりも急に感じました。このアップダウンは徒歩で行くには厳しいルートです。
これは間に合わないのじゃないかと諦めかけていましたが、結果的に、バス停に到着したのは発車時刻ぴったりでした。バスは定刻より1分ほど遅れてやって来ました。もしかしたら、実は間に合っていなかったという可能性もあるくらいです。どうやら運に助けられたみたいです。
このように間に合わない危険性が大いにあるルートですので、おすすめは致しません(自己責任でお願い致します)。
県道7号線に出たとき、目の前の景色が開けて田園風景が広がったのが印象的でした。
おおなんバスの乗り継ぎ[今西~道の駅~石見川本]
(1)羽須美田所線
今西からは、おおなんバスに乗車します。バスとはいっても、ハイエース型の車両で運行されているようです。大人数の乗車はできません。
バスは各地の集落をまわって、細い道を通って道の駅へと向かいます。途中で地元の方が1人乗ってきただけで、道の駅までは2人だけでした。
料金は200円とかなりリーズナブルです。
(2)道の駅瑞穂
羽須美田所線のバスの終点は、道の駅瑞穂です。この道の駅は、地域の拠点となっているようで、あちこちの方面からバスがやって来て、バスターミナルの役割も兼ねているようです。
ここで石見川本行きのバスへ乗り継ぎますが、1時間半ほど時間があります。道の駅にはラーメン屋も入っているので、食事にはちょうどいいです。産直もあり、こちらで買い物をするのもいいでしょう。しかも、道路を挟んで反対側にはコンビニもありますのでかなり便利なところです。
(3)邑南川本線
引き続いておおなんバスに乗車します。石見川本行きのバスは先ほどより大型です。途中で病院を経由するなど、地元の交通手段としての役割が大きいようです。
このバスで終点まで乗ると、石見川本駅の目の前に到着します。5~6名程度の乗客がいましたが、終点まで行く人はほかにいませんでした。
料金は400円で、こちらもリーズナブルです。
ただし、石見川本に到着しても列車との接続は、微妙なところです。バスの到着時刻は15時12分ですが、三江線の列車は三次行きが16時25分、江津行きが17時48分にやってきます。
なお、バスは石見川本の到着前に、因原駅に隣接する「道の駅インフォメーションセンターかわもと」に止まりますので、こちらで下車するという選択肢もあります。
時刻表から現実的な途中下車を考えるとすれば
朝と夕方の時間帯の列車を使えば、ほかの途中下車のプランが立てられそうです。あくまで時刻表を見た限りのものですが、次のあたりが比較的、現実的でしょうか。
(1)浜原駅5時56分発・三次行き(421D)
宇都井駅に6時27分に到着します。途中下車をして、この後の7時12分発の浜田行きを待ちます。
(2)三次駅5時38分発・浜田行き(422D)
宇都井駅に7時11分に到着します。途中下車をして、この後の8時14分発の三次行きを待ちます。
(3) 江津駅15時15分発・三次行き(429D)
宇都井駅に17時37分に到着します。途中下車をして、この後の18時09分発の浜原行きを待ちます(終点の浜原では19時03分発の江津行きに乗車できます。)。
これらのプランは、途中下車をしたはいいものの、次の列車で来た道を戻ることになることが難点になるかもしれません。うまく工夫して行きつ戻りつしながら沿線を楽しむプランが組めればおもしろいと思います。*1
いずれにせよ、宇都井駅での途中下車は一筋縄では行かないようです。