今回のメインは路面電車です
富山県では、多くの路面電車が活躍しているのを見かけます。富山駅前から出て市内を走っている富山地方鉄道の軌道線がもっともメジャーであろうと思いますが、今回紹介します万葉線(高岡駅~越ノ潟)と、富山ライトレール(富山駅北~岩瀬浜)も路面電車の一種です。
もっとも、両線ともに単に「路面電車」とひと括りでお終いにするのはもったいなく、この点については後記で触れていきたいと思います。
盲腸線を路線バスで乗り継ぐ
万葉線と富山ライトレールともに、路線図を見れば明らかなように、いずれも盲腸線となっており、終点の越ノ潟や岩瀬浜からはつながる他の線路がありません。
両線とも終点まで行ってもそれほど距離がなく、本数も日中は1時間あたり4本あるので、単純に往復するということでも、さほど苦にはならないと思います。
しかし、それも芸がないので、終点駅同士をつなぐ路線バスルートを探して、射水市のコミュニティバスにたどり着きました。路線名も「海王丸パーク・ライトレール接続線」と、このためにあるかのような名前です。ただし、土日祝日のみの運行です。
万葉線は路面電車?「鉄道」と「軌道」
冒頭より路面電車という言葉を使ってきましたが、これも突き詰めて考えてみると分類が難しいものです。
もっともイメージされやすい路面電車というのは、車道上に敷かれたレールの上を列車が走るというものと思います。これは併用軌道と呼ばれ、基本的には軌道法に基づく「軌道」と分類されるものです。これに対して、JRなど道路敷ではない場所のレールを走る「鉄道」は、鉄道事業法に基づくものであり,準拠する法律が違っているのです。*1
万葉線の線路は大きくは2つに分けることができ、高岡駅~六渡寺(高岡軌道線)が軌道法に基づく「軌道」、六渡寺~越ノ潟(新湊港線)が鉄道事業法に基づく「鉄道」となっているのです。
なお、万葉線という名称は、『万葉集』の歌人・大伴家持が高岡の地に赴任したことに由来するようです。
高岡軌道線と新湊港線の境界の六渡寺駅を出ると、次の庄川口駅までの間で有名な撮影スポットである庄川橋梁を渡ります。軌道を走ってきた路面電車が川を渡る姿は、なかなか面白い光景ではないでしょうか。
終点の越ノ潟駅は、駅の前に船の発着場が建てられているだけで、ちょっと殺風景な感じもありますね。ここから歩いてすぐのところに新湊大橋があり、そこから岩瀬浜行きのバスが出ています(土日祝日のみ)。
圧巻の新湊大橋を渡り、越ノ潟と岩瀬浜をつなぐ
越ノ潟駅から100mほど歩いて新湊大橋までやってきましたが、迫力のスケールです。それもそのはず、この橋は日本海側で最大の斜張橋と言われてます。上は車道、下は歩道の2層構造になっています。
新湊大橋の歩道の「あいの風プロムナード」からは、海王丸もよく見えます。遠目からみても立派な姿ですね。
新湊大橋のふもとのバス停の「新湊大橋西桟橋口」から、射水市のコミュニティバスが出ています。
ここから、海王丸パーク・ライトレール接続線に乗車して、新湊大橋を渡って岩瀬浜駅まで行くことができ、運賃は500円です。この日はほかに乗客はなく、筆者ひとりだけでした。


路面電車として再出発した富山ライトレール
さて、コミュニティバスで富山ライトレールの終点駅である岩瀬浜駅までやってきました。路面電車らしい低床式の車両は「ポートラム」の愛称が付けられています。
富山ライトレールは、現在は第三セクターによる運営で路面電車が走っていますが、もともとは「国鉄・富山港線」として鉄道が運行がされていました。すなわち、鉄道であった路線を、路面電車へと転換を行ったというわけです。*2
また、第三セクターになってから「鉄道むすめ」とのコラボも積極的なようです。
海外においては、路面列車のような小型・軽量な車両を用いて都市の輸送機関を整備するライトレール・トランジット(LRT)の導入事例は見られるようです。富山ライトレールは、日本初の本格的なLRT導入といわれています。
富山ライトレールは、LRT化により新駅の設置、運転本数の増加など利便性が向上するメリットがあったようです。沿線には住宅も多く、富山駅への通勤・通学などの需要があるのではないかと思います。
今後は、岡山県のJR吉備線(桃太郎線)がLRT化される見通しとなっており、より地域に密着した小回りのきく公共交通機関となるのではないか、注目されるところです。